青き桜の舞う頃に

-すこしむかしのおはなし-
派手な音を立て、巨大な躯が倒れる
「騙し騙し来たけど、さすがに限界か・・・」
コクピットから、メード服の「犬」が這い出てきた
「手持ちのキットじゃこれ以上は・・・ごめんトモエ、きっと後で直してあげるからね」
長旅で憔悴していた体に活を入れ、その犬は街の方へと歩いていった





-避け藩国お花見会場-
花見も佳境に差し掛かった頃、一匹の子猫が動き出した
暴れだした者や、花見本来の楽しみ方をする者、満腹になって睡魔と闘う者
周囲の人に気づかれないように、そ~っとテーブルの上に残された一升瓶に手を伸ば・・・
ガシ!
「だめやで、うにょさんは未成年やろ~」
「でんせつのあんさつへいき」で倒れていた黒崎がゾンビのように起き上がり手を掴んだ
「えっと・・・いや、これはあの・・・」
突然腕を捕まれ、ビクっと体を竦ませるうにょ・・・まさか生きているとは思っていなかったので目をシロクロさせている
「こ、これは、その・・・そう、お酌です!こう、紺碧おねえさまにお酌でもしてさしあげようかな~と」
黒崎はジトーとした目で慌ててバタバタと手を振るうにょを見ていたが
「・・・まぁ、お祭りやし、だけどあんまハメ外しちゃあか・・ん・・・で・・・」
と言い残しまた倒れてしまった

動かなくなった黒崎に手を合わせ、用意したコップに「避け美少年」と何処からともなく取り出した着色料バリバリの青い炭酸ジュースを混ぜる
「これでよし!」
そういって、謎のチューハイが並々とそそがれたコップを両手に持ち、駆け出していった




花見会場の端に他の桜とは少し距離を空け、花びらの色合いが違う桜がポツンと咲いていた
その桜の元に、メード服の「猫」が走ってきた
「はぁ、はぁ・・・久しぶり、だね」
桜の幹に背を預け、桜を見上げる
返事をするかのように、桜の花びらが一片、手にしたコップに舞い落ちる
「うん、ごめんね、最近忙しくて」
さっきまでの喧騒が嘘のような静かな桜の下、目を閉じて少し前の事を思い返す

あの日、この場所に壊れた機体を置いていった・・・はずだった
だが、再びこの場所に戻ってきた時に彼女を迎えたのは、壊れたI=Dではなく一本の桜だった
場所を間違えたのかと思い、必死になって周りを探した
誰かが気付き、気を利かせて隠したのかと思い、それとなく人に聞いてみた
だが見つからなかった
果てには、「あんな所にも木が生えてたかな?」と言う者までいた
それ以来、彼女はちょくちょくとこの桜を見に来るようになっていた

ゆっくりと目を開ける
視界を埋める一面の桜色が、一瞬真っ白な雪を思い浮かばせる
「そうそう、これ持ってきたんだよ」
目を覚ますように顔を振り、持ってきた片方のコップの中身を少し根にかける
「・・・ん~、良く考えたらお前も未成年?まぁ、樹だからいいよね」
半分ほど中身の残ったコップを根元に置く
勢い良く背を離し、桜の樹と向かい合う
「そろそろ行こうかな・・・それじゃまたね、トモエ!」
大事そうにコップを両手で持ち、すこしまえに歩いた道を、今度は駆けていく
愛しいあの人の元へ



「お~~~~~ね~~~~~え~~~~~さ~~~~~ま~~~~~!!!!」

応援するように、青みがかった桜の花びらが風に舞った



















-ここは私立のうきん女学園-
「ごきげんよう」
「ごきげんよう」
「聞きました?あのお話」
「えぇ、もちろん!近頃皆さんこのお話ばかりですもの」
「『この国のどこかに、地中に埋まったモノの養分を吸収して、この世のものとは思えないとても美しい花を咲かせる妖桜がある』・・・一度でいいから見てみたいわね~」


【解説】
海法よけ藩国のお花見での一コマ
ジェントルラット亡命によって、ほねっこ男爵領から海法よけ藩国に来たうにょのお話です
当時からうにょはよけ藩国の摂政の青にして紺碧さん(男性)を(一方的に)「おねえさま」と呼び慕っています

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